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東京地方裁判所 平成3年(ワ)17065号 判決

原告

東京都

右代表者知事

鈴木俊一

右訴訟代理人弁護士

浜田脩

被告

田宮豊久

右訴訟代理人弁護士

黒田純吉

主文

一  被告は原告に対し、別紙物件目録二AないしC記載の各増築部分及び設置物を収去して、同目録一記載の建物を明け渡せ。

二  被告は原告に対し、平成三年一二月一日から右建物明渡済みまで一か月金一万七八二〇円の割合による金員を支払え。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

四  この判決は、第二項及び第三項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一  請求

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  別紙物件目録一記載の建物(以下「本件建物」という。)は、原告が所有し管理する都営住宅である。

2  原告は、昭二八年五月一九日、被告との間で、公営住宅法(以下「法」という。)及び東京都営住宅条例(以下「条例」という。)に基づく都知事の使用許可により、期限を定めず本件建物の賃貸借契約を締結し、同日、本件建物を引き渡した。

3  被告は、本件建物入居後、本件建物に接続あるいは隣接させて、別紙物件目録二AないしC記載の各増築部分及び設置物を建築あるいは設置した。

4  原告が法第二三条の二及び条例第一九条の五に基づき、法施行令第一条第三号及び第六条の三(いずれも平成三年一月二二日政令第三号による改正前の規定)の定める計算方法により被告の昭和六二年度及び昭和六三年度の各収入状況を調査した結果、被告の認定収入月額は、昭和六二年度が三三万九六一六円、昭和六三年度が六二万八五五四円であった。

5  右によれば、被告は本件建物に引き続き五年以上入居しており、かつ、最近二年間引き続き被告の収入が平成三年一月二二日政令第三号による改正前の法施行令第六条の三第一項所定の収入基準月額二六万九〇〇〇円及び昭和四九年条例第一二三号附則第三項所定の高額所得者基準月額三〇万四〇〇〇円を超えていたため、都知事は、平成元年三月二〇日、条例第一九条の六第一項に基づき、被告を高額所得者と認定し、同月二二日到達の内容証明郵便をもって、その旨を被告に通知した。

その後、原告は、法第二一条の四及び条例第一九条の九に基づき、東京都住宅供給公社住宅の優先入居の斡旋、低金利住宅建設資金融資制度の説明をするなど、被告が本件建物を容易に明け渡すことができるよう、再三にわたり相談・指導等を行ったが、被告は、右指導等に従わず、本件建物の明渡に協力しなかった。

6  そこで、都知事は、条例第一九条の七に基づき、東京都都営住宅高額所得者審査会に被告に対する明渡請求の可否を諮問し、右明渡請求を可とする答申を得たうえ、法第二一条の三及び条例第一九条の七に基づき、被告に対し、本件建物の使用許可を平成三年七月三一日限りで取り消す旨及び本件建物を同日限りで明け渡すことを求める旨を平成二年一二月二一日到達の内容証明郵便をもって通知した。

7  右使用許可取消時以降の本件建物の使用料は一か月一万七八二〇円(規定使用料九九〇〇円、付加使用料七九二〇円)である。

8  よって、原告は、被告に対し、本件建物についての賃貸借契約の終了に基づき右3の増築部分を収去した上での本件建物の明渡を求めるとともに、本件賃貸借契約終了後の平成三年一二月一日から右明渡済みまで一か月一万七八二〇円の使用料相当損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1ないし3の事実は認める。

2  請求原因4の事実は不知。

3  請求原因5のうち、高額所得者認定通知が被告に到達したことは認め、その余の事実は不知。

4  請求原因6のうち、都知事が本件建物の明渡請求の可否を原告主張の審査会に諮問し、同審査会が答申をした事実は不知。その余の事実は認める。

5  請求原因7の事実は否認する。

三  被告の主張

1  高額所得者明渡制度の違憲性

住居は、人間がその生命を維持し社会生活を営む最も基本的条件であり、人は落ちついた生活を保障されることではじめて地域とのつながりを保ち、周囲の人々との人間関係を形成し、人たるにふさわしい生活をすることができる。また、家庭生活を営み、子を教育し、勤労生活を続けることができる。このような意味において、居住権は、憲法二五条一項の生存権、第一三条の生命、自由及び幸福追求に対する権利並びに第二九条に定める財産権の一種として憲法上保障された基本権というべきところ、法第二一条の三、法施行令第六条の三、条例第一九条の六及び同条の七等により定められたいわゆる高額所得者明渡請求制度(以下「本件制度」という。)は、次のとおり、その立法理由及びその手段のいずれにおいても著しく不合理で、公営住宅の入居者すべての居住権を侵害するものであり、憲法の前記各条項に違反する。

(一) 本件制度は住宅に困窮する低額所得者に住宅を提供することを目的とするとされるが、真に住宅に困窮する低額所得者が公営住宅に入居できない原因は、公営住宅の絶対量の不足にあるのであり、高額所得者が居住を継続していることにあるのではない。既存の住宅量を所与、絶対のものとして、高額所得者の存在ゆえに公営住宅に入居できない低額所得者が存在するものとする本件制度は何ら合理性を有しない。

(二) 本件制度は明渡事由を一定限度を超える収入(同居親族の所得を合算したもの)にかからしめ、その収入基準の超過年限をわずか二年としている。しかし、人の収入は種々雑多な要因により絶えず変動するものであり、同居親族の所得も合算するとなると、「低額所得者」と「高額所得者」の交替可能性は大きく、公営住宅の入居者すべてにとってその居住の継続性、安定性を脅かし、居住権を侵害するものである。むしろ明渡事由の認定は、より総合的、多角的な見地から別途の方法により認定されるべきものであり、借家法の「正当事由」の活用等によって行われるべきである。

2  本件明渡請求の不当性

(一) 被告が昭和二八年に本件建物に入居した際、被告は、原告の担当職員から、近いうちに本件建物を払い下げる旨の説明を受け、それ以来これを信じて本件建物を自己の家として永住の意思をもって居住してきた。ところが、原告は、突然、公営住宅法及び条例が変わったため払い下げができないと態度を一変させた。

(二) 本件建物に被告が入居した当時は、四世帯で共用する井戸がひとつあったのみで水道はなく、ガスも風呂もなかった。被告ら入居者は、井戸にポンプを取り付け、各世帯までパイプを配管し、周囲に樹木を植え、垣根を巡らし、庭も作った。また、本件建物の裏を石神井川が流れていたため本件建物は台風時などに度々浸水の被害を受けたが、原告は被告の申請にもかかわらずほとんど本件建物の修繕をせず、大部分の修繕は被告が自らの費用で行った。昭和四〇年(別紙物件目録二A部分)、昭和五七年(同目録二B部分)には増築をも行い、本件建物を丹精込めて維持管理してきた。

(三) 被告と妻は、三人の子を本件建物で育て上げ、昭和五七年に二女が、昭和三六年に長女が、平成三年には長男が、それぞれ結婚して独立し、現在は夫婦二人の生活である。被告の妻は六一歳であり、二〇年来糖尿病を患い、入退院を繰り返しており、現在では視力が衰え、膝に強い痛みがある。被告は資産を持っておらず、現在勤務している会社も先行きに不安がある。

(四) 一方、本件建物の隣りの二世帯は昭和六一年ころ相次いで引っ越し、それ以来空き家となっているが、原告は新たに入居者を入れずに、建物を取り壊して、敷地を雑草が生い茂るままに放置している。

(五) 以上のとおり、被告は、昭和二八年に本件建物に入居して以来、将来本件建物の払い下げを受けられるものと信じて、本件建物を維持管理し、周囲の住環境の整備にも資金と労力を投じてきた。このような本件制度創設前からの入居者である被告に対して、政策が変わり、新しい明渡制度ができたとして明渡を求めることは極めて不当であり、許されない。

四  被告の主張に対する認否

1  被告の主張1は争う。

(一) 本件制度は、家賃の低廉な公営住宅への入居を切望する低額所得者が数多く存在する一方で、公営住宅入居後の収入増加により他の住宅に転居することが可能となったにもかかわらず公営住宅に居住し続けている入居者が存在するという不公平な状況を是正して、公営住宅法の目的を十分に達成するために、昭和四四年に新設されたものであり、その立法理由は合理的なものである。

(二) 本件制度における高額所得者認定の基準は、一般の勤労者の所得水準や諸物価の高騰等を勘案し、時宜に応じて改定されており、殊に被告に対して本件制度が適用された当時の条例は、法の基準を緩和したものになっている。

また、高額所得者に認定された入居者に対しては、公営住宅等の他の住宅への入居の斡旋や低金利住宅建設資金融資の説明といった諸手続をとるなど、入居者が公営住宅を容易に明け渡すことができるよう十分に配慮されている(法第二一条の四、条例第一九条の九)。

さらに、条例においては、知事の附属機関として東京都都営住宅高額所得者審査会を置き、高額所得者に対する明渡請求の可否について同審査会に意見を求めることとされており(条例第一九条の七、第二二条の三)、高額所得者に認定された入居者に対する明渡請求の公正を期している。

(三) 右のとおり、高額所得者明渡制度は、公営住宅を明け渡すべき高額所得者の保護にも欠けるところなく、公営住宅の本来的設置目的である住宅に困窮する低額所得者についての住宅福祉を推進させるべく機能しているのであり、合理的かつ妥当な制度というべきである。そして、本件制度によって入居者が何らかの不利益を被ることがあるとしても、それは公共の福祉のためにやむを得ない範囲内の制約であり、また、被告に対して本件制度を適用したことも、法の目的を達成するための手続として合法的な範囲を逸脱したものではなく、いずれの点においても憲法に違反するものではない。

2  被告の主張2は争う。

第三  証拠〈省略〉

理由

第一請求原因について

一請求原因1ないし3の事実は当事者間に争いがない。

二次に、〈書証番号略〉、証人石橋伸一郎の証言並びに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。

1  都営住宅に二年以上居住している者については、毎年六月末までに収入に関する報告を提出することが義務づけられているが(条例第一九条の四、同施行規則第二一条)、被告がその報告をしなかったため、原告は、練馬区役所の課税台帳に基づいて昭和六一年及び昭和六二年中の被告本人及びその家族収入状況を調査し、これをもとに、公営住宅法施行令第一条第三号及び第六条の三(いずれも平成三年一月二二日政令第三号による改正前の規定)に基づき、昭和六二年度及び昭和六三年度の被告の収入(月額)を認定した結果、昭和六二年度は三三万九六一六円、昭和六三年度は六二万八五五四円であった。

都知事は、被告に対し、昭和六二年及び昭和六三年の一〇月末日ころ右で認定した収入額を通知したが、被告から何らの異議の申出もなかった。

なお、〈書証番号略〉及び被告本人の供述によれば、被告の長女久恵が昭和六二年一二月一八日に勤め先を退職し、昭和六三年一月に結婚して本件建物から出たことが認められるが、右認定の収入額認定の経緯等に照らすと、右の事実は本件における被告の昭和六三年度の収入額の認定に影響を及ぼすものではない。

2  被告の収入額が右のように認定された結果、被告は、都営住宅を引き続き五年以上使用している者で、最近二年間の認定収入額が引き続き二六万九〇〇〇円を超え、さらに収入基準額を暫定的に緩和していた昭和四九年条例第一二三号附則第三項所定の基準月額三〇万四〇〇〇円をも超える高額所得者に該当することが明らかになったため(条例第一九条の六第一項、法第二一条の三第一項、平成三年一月二二日政令第三号による改正前の法施行令第六条の三第一項)、都知事は、平成元年三月二日、条例第一九条の六第一項に基づき、被告を高額所得者と認定し、同月二二日到達の内容証明郵便をもって、その旨を被告に認定した(右通知の事実は、当事者間に争いがない)。

その後、都知事は、被告に対し、法第二一条の四及び条例第一九条の九に基づき、公営住宅あるいは公社住宅の斡旋制度、住宅金融公庫及び東京都の住宅建設資金(マイホーム資金)の融資の制度の説明をし、「公団・公社空家あっせんのしおり」及び「都融資のしおり」を送付するなど、本件建物の明渡を容易にするための相談、指導を再三にわたって行ったが、被告は、明渡を拒絶する明渡計画書を原告に提出するなどして、一貫して本件建物の明渡を拒否しつづけた。

3  そこで、都知事は、条例第一九条の七に基づき、東京都都営住宅高額所得者審査会に被告に対する明渡請求の可否を諮問し、右明渡請求を可とする答申を得たうえ、法第二一条の三及び条例第一九条の七に基づき、被告に対し、平成二年一二月二一日到達の内容証明郵便をもって、本件建物の使用許可を平成三年七月三一日限り取り消す旨及び本件建物を同日限りで明け渡すことを求める旨通知した(右通知の事実は、当事者間に争いがない。)

4  右使用許可取消時以降の本件建物の使用料は、一か月一万七八二〇円(規定使用料九九〇〇円、付加使用料七九二〇円)である。

第二被告の主張について

一憲法違反について

本件制度は公営住宅に引き続き五年以上入居している者で一定の基準を超えた収入を得ている状態が二年間続いた者を明渡請求の対象とするものであり(法第二一条の三第一項、法施行令第六条の三第一項)、公営住宅居住者が本件制度により一般の借家人よりも居住の安定性、継続性の点で不安定な地位に置かれる面のあることは否めない。

しかし、居住の安定、継続という生活上の利益も公共の福祉による制約を免れないと解されるうえ、住宅に困窮する低額所得者を対象として供給され、低廉な家賃で賃貸されるという公営住宅の趣旨、性格(法第一条)からして、公営住宅の入居者が公共の福祉のために必要かつ合理的な範囲内で一般の借家人と異なる制約を受けることもやむを得ないところであり、このような制約は憲法上も許容されると解される。

本件制度は、住宅が不足して公営住宅への入居を希望する低額所得者が非常に多い一方、公営住宅入居当時は低額所得者であったがその後所得が上昇して相当高額の収入を得るに至ってもなお引き続き入居を継続している者がかなり存在するという状況の下で、このような法第一条所定の目的に反し、社会的にも不公平な状況を是正することを目的とするものであり、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で住居を提供するという公営住宅の本来の趣旨に沿った合理的なものである。そして、本件の被告に適用されている月額三〇万四〇〇〇円という高額所得者認定基準額は、入居基準額と比較して相当高く設定されており、公団、公社住宅など公営住宅以外の住宅への転居も可能と認められる程度の額であること(〈書証番号略〉、証人石橋伸一郎の証言)、東京都においては、本件制度に基づく明渡請求の公正を期するため、都知事が高額所得者に対して明渡請求をしようとするときは、あらかじめ、学識経験者五名以内で構成する東京都都営住宅高額所得者審査会に意見を求めることを義務づけていること(条例第一九条の七、第二二条の三)、高額所得者に認定された入居者に対し他の公的資金による住宅への入居や融資の斡旋等の明渡を容易にする措置をとるべきこととしていること(法第二一条の四、条例第一九条の九)、明渡請求をする場合の明渡の期限は請求をする日の翌日から起算して六か月を経過した日以後の日としなければならないとして、高額所得者の明渡が無理なく行われるよう配慮していること(法第二一条の三、条例第一九条の七)、公営住宅居住者が病気にかかっているなど特別の事情がある場合は、明渡期限を延長し、若しくは明渡請求を取り消すことができるものとし、一定限度で個々の入居者の事情を考慮に入れることも可能にしていること(条例第一九条の八)、国及び東京都の財源には限りがあることを総合すれば、公営住宅制度の目的を実現するため一定の収入基準を超えた入居者の明渡を求めることも必要かつやむを得ないものというべきであり、立法機関が法第一条所定の目的を達するための手段の選択に当たりその裁量の合理的な範囲を逸脱したともいえない。

したがって、本件制度が憲法第二五条、第一三条及び第二九条に違反するとする被告の主張は、採用できない。

二本件明渡請求の不当性について

1  〈書証番号略〉、被告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

被告は、結婚直後の昭和二八年三月に本件建物に入居したが、その際原告の職員からいずれは払い下げられるから自分の家だと思って大切に使うようにと言われたため、本件建物を将来は自分のものにした上で永住するつもりでおり、家賃を一度も滞納せずに払い、かなりの費用を費やして本件建物を増築し(別紙物件目録二のA及びBの部分)、中小の修繕はほとんどが被告が自費で行った。また、被告が本件建物に入居した当時は水道がなく、四軒供用の井戸のみしかなかったため、被告は昭和三〇年ころに自らポンプ式の井戸を掘った。さらに、本件建物のすぐ近くを流れる石神井川が台風の度に増水して、浸水被害を度々被った。

被告が期待していた本件建物の払下げは、その後の政策変更等により、昭和四〇年以前に実現不能となった。

原告は、昭和二〇年九月国鉄職員になり、昭和六一年一月国鉄本社東京北局事業部長を最後に退職し、その後株式会社正光庵役員となって、現在に至っている。

原告は、現在妻と本件建物に居住しているが、昭和六三年八月に大腸癌の手術を受け、被告の妻は糖尿病等のため現在目がほとんど見えず、歩行も困難な状態である。

2  以上認定したとおり、被告は、原告職員から将来払下げを受けられるとの説明を受けて本件建物に入居し、それ以来本件建物を自己のものと同様に愛着をもって維持管理してきたことが認められるうえ、現在は被告もその妻も健康状態が良くないなど、被告にとって気の毒な事情も認められる。

しかし、被告本人尋問の結果によれば、被告は、期待していた本件建物の払下げが実現不能となったことを昭和四〇年前後には知っていたこと、都営住宅に本件制度が採り入れられた昭和四九年当時に、原告から本件制度についての通知を受けて、その概要を承知していたことが認められるし、〈書証番号略〉によれば、被告の所得額は昭和六二年に現在の会社に再就職して以来昭和六三年、平成元年と年々増加し、認定収入額も平成二年度には明渡認定基準額の二倍以上である八一万六三四五円に達していることが認められる。

なお、被告本人尋問の結果によれば、本件建物と隣接していた都営住宅についてはかなり以前に明渡がなされ、建物が取り壊されたが、その跡地は現在に至っても空き地のままの状態であることが認められるが、高額所得者に対して公営住宅の明渡を求める時点で当該建物ないし土地の用途を決定しておかなければならない義務まで負うとはいえないのであるから、右の事実は被告に対する明渡請求の障害とはなり得ない。

3  これらの事実を総合すると、原告の被告に対する本件明渡請求が信義則に反し許されないとは認められず、この点についての被告の主張も採用できない。

第三以上によれば、原告の本訴請求はいずれも理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。なお、建物明渡請求に関する仮執行宣言の申立てについては、相当でないからこれを却下する。

(裁判長裁判官魚住庸夫 裁判官畠山稔 裁判官市川多美子)

別紙物件目録〈省略〉

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